
指導・監査再開で問われる「事業所の内部管理」
介護サービス事業所に対する自治体の監督が、コロナ禍を経て本格的に再開しています。
厚生労働省が公表した「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」によると、全国の自治体が実施した運営指導は5万424件にのぼりました。
また、指定取消や指定効力停止などの行政処分は158件となり、前年度より増加しています。
この結果は、各種介護メディアも報じており、コロナ禍で一時的に減少していた自治体の指導・監査が再び活発化している実態が浮かび上がっています。
運営指導5万件超…コロナ後で最多水準
資料によると、自治体による運営指導の実施件数は5万424件でした。
これは全国の介護事業所の16.2%に対して実施されたことになります。
運営指導は、具体的には次のような点が確認されます。
・介護報酬請求の適正性
・人員配置基準、運営基準の遵守
・サービス提供記録の整備
・利用者の権利擁護体制
・虐待防止体制
・その他
コロナ禍では、感染拡大の影響で訪問による指導が制限されオンラインでの集団指導に変わり、監査や指導件数が減少していました。
しかし現在はコロナ前の水準に戻りつつあり、自治体の監督責任が再び強まっている状況です。
行政処分158件で最も多いのは「不正請求」
一方、昨年度に指定取消や効力停止などの行政処分を受けた事業所・施設は158件でした。
これは前年度の139件から19件増加しています。
処分の内訳は次の通り。
・指定取消:59件
・指定の一部効力停止:86件
・指定の全部効力停止:13件
処分理由として最も多いのは介護報酬の不正請求です。
そのほか、以下のような違反も確認されています。
・高齢者虐待など
・法令違反
・虚偽報告・虚偽答弁
・人員基準違反
厚生労働省は、不正請求などの問題について「利用者に著しい不利益を与えるだけでなく、介護保険制度の信頼を損なう」と指摘し、事業者に対して管理体制の強化を求めています。
なぜ処分が増えているのか
処分件数が増加している背景には、主に次の3つの要因があると考えられる。
(1)コロナ後の指導・監査再開
コロナ禍では自治体職員の訪問指導が制限されていました。
現在は通常の監査体制に戻りつつあり、過去の不正や違反が顕在化している可能性があります。
(2)人材不足による運営の不安定化
介護業界では慢性的な人材不足が続いています。
人員基準を満たせないまま運営を続けるケースや、管理体制が弱くなるケースが増えている可能性も指摘されています。
(3)管理体制の未整備
小規模事業所では
・管理者が現場業務と兼務
・請求チェック体制がない
・法令理解が不十分
といった状況も珍しくありません。
その結果、意図的ではない「制度理解不足による違反」が発生するケースもあります。
実は多い「悪意のない不正」
指導・監査の現場では、必ずしも悪意ある不正だけではありません。
例えば次のようなケースもある。
・加算要件を満たさないことを確認し忘れ請求していた
・記録が不足していたため不正請求扱いになった
・人員基準の計算を誤っていた など
つまり、制度理解や管理体制の弱さが原因で処分につながるケースも少なくありません。
特に介護報酬制度は複雑であり、管理者やリーダーが制度改定を十分に把握できていない場合、リスクが高くなります。
事業所が今すぐ見直すべき3つのポイント
指導・監査の再活性化を踏まえ、介護事業所では次の3点を確認しておく必要があります。
(1)介護報酬請求、自己点検シートなどの内部監査チェック
請求担当者だけに任せるのではなく、管理者や経営者による二重チェック体制を整備することが重要です。
(2)人員基準などの定期確認
シフト変更や退職などによって、人員基準を満たさなくなるケースは多いです。
月単位でのチェックが必要です。
(3)記録の整備
介護保険制度では「記録がない=実施していない」と判断される場合があります。
サービス提供記録や加算要件の記録を確実に残すことが重要であり、請求業務同様に二十チェック体制を整備すると良いでしょう。
問われる「事業所管理」
今回のデータは、自治体による監督体制が本格的に再開していることを示しています。
介護事業は福祉サービスであると同時に、公費と保険料によって支えられる公的制度ビジネスでもあります。
そのため、事業所には「法令遵守」「内部統制」「事業管理」といった視点がこれまで以上に求められています。
指導・監査強化の流れは今後も続くとみられます。
地域の信頼を維持するためにも、介護事業者にはより高度な運営管理が求められる時代になりつつあります。
【お役立ち情報】
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料【介護保険指導室】
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001669791.pdf
【お役立ち研修】




















